さまざまな国にパンダは送られているけれど…(写真はイメージ/gettyimages)
さまざまな国にパンダは送られているけれど…(写真はイメージ/gettyimages)
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 1940年に始まったいわゆる「パンダ外交」は、現在も積極的に展開されている。だが、外交上の理由のみでパンダの貸し出し先が決まるのかというと、そう単純でもないようだ。パンダが来るか、来ないか、それを分かつものはいったい何なのか。

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フランスにシンガポール…世界各国にパンダ

 2010年代以降、中国は世界各国にパンダを貸し出してきた。

 2011年は上野動物園にリーリーとシンシンが来日した時期で、同年には英国のスコットランド、12年にはフランスとシンガポール、13年にはカナダに貸し出されている。それ以降も、中国政府は他国とのパンダ繁殖のための研究協力を積極的に展開し続けており、パンダの送り先はいっそう多角化しているように見受けられる。

 中国の習近平政権は2013年ごろから、陸路と海路でヨーロッパと緊密につながる「一帯一路」という巨大経済圏構想を打ち出し、そのルート上の国々との経済関係、外交関係を強化する政策を積極的に進めた。パンダの送り先の多角化は、この外交上の構想に関係しているとの見方もある。

カタールにもパンダ!

 具体的には、2014年にベルギーとマレーシア、16年に韓国、17年にオランダとドイツとインドネシア、18年にフィンランド、19年にデンマークとロシアが、それぞれパンダを借り受けている。22年には、サッカーのFIFAワールドカップの開催に合わせ、カタールにパンダが貸し出された。これは、中東の国家として初めてのパンダの受け入れになる。

 中国政府がどのような基準でパンダの送り先を決定しているのか、詳細はよくわからない。一帯一路は非常に巨大な経済圏構想なので、もしそれと「パンダ外交」が関連していると言うのであれば、もっと多くの国がパンダを受け取っていないとおかしいことになる。では、パンダがいる国といない国の違いは、何によって生まれているのだろうか。

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