第1位「難破船」

「難破船」(ファン私物 撮影/中村隆太郎)
「難破船」(ファン私物 撮影/中村隆太郎)

 2位とわずか2票差で若い世代にお勧めしたい曲の第1位に選ばれたのは「難破船」。84年に加藤登紀子が発表した楽曲で87年に中森明菜がカバーした19枚目のシングルだ。歌の世界に入り込む姿は「憑依」とも表現され、切ない失恋の歌詞をささやくように歌い、曲の最後に涙を流す。その姿には心を奪われる。

「『難破船』は明菜さんの多くの楽曲の中でも歌う姿が印象的でした。誰かを想い、涙しながら歌う姿が当時、実らない恋をしていた私にとって重なる気持ちがあり、思い出深かったです」(50代・女性)

「中森明菜の感情が一番表現されている曲。ここまで歌の世界に没入する歌手はそうそういないと思います。マイクを持つ手が震えたり、涙を流したりして歌う姿は、誰の心にも刺さる名曲だと思います」(50代・男性)

「楽曲そのもののスケール感と彼女の泣きの歌唱が相まって、絵画のような仕上がりになっていて引き込まれました」(60代・女性)

「この曲は元々加藤登紀子さんが歌われていて、中森明菜さんに託したという話を聞いたことがあります。悲しそうな表情で歌うも音は外さない。訴えかけるように歌う姿に、聴く私が悲しい気持ちになるわけではなく、逆に心を奪われた記憶があります。YouTubeで久しぶりに聴きましたが、今でも心が惹き付けられます。今の時代、中森明菜さんのような歌手はいないので、若者にぜひ聴いてほしいです」(50代・女性)

 明菜の姿を見る側も心が揺さぶられる。

「明菜さんを大好きになりハマったのは『少女A』ですが、お勧めの曲として選ぶのは『難破船』。初めて聞いたときから今も大好きな曲です。歌唱する姿に引き込まれ自然と涙が溢れてくる……この歌は明菜さんにしか歌えない曲だと思っています」(50代・女性)

「当時(確か)まだ22歳なのに、完全に歌の主人公になり切って、時には涙をポロポロこぼしながら歌う姿に引き込まれました。見ているこちらまで切なくて悲しくて、気づいたら私も泣いていました。あそこまで、歌の世界に引きずりこめる歌手は、明菜さんのほかにいません」(50代・女性)

 還暦になった中森明菜の「難破船」も、ぜひ味わってみたいものだ。

(AERA編集部)

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