パンダ
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 パンダ界のアイドル・シャンシャン誕生の裏には、上野動物園の飼育スタッフたちの奮闘があった。飼育展示課長として携わった渡部浩文さん(現・多摩動物公園長)に当時を振り返ってもらった。

【写真】きゅんっ! つぶらな瞳でお母さんを見つめるシャンシャン

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 中国の専門家の来日前に2頭が発情のピークを迎えると考えられ、私たちで同居の判断をする必要があった。そのような中、2月27日早朝に柵越しのお見合いでシンシンが尾を上げてオスを受け入れる態勢を取るといった発情のピークを示す行動が見られたため、午前8時ごろに2頭を同居させた。この様子もまさに教科書通り、やや2頭は警戒するものの、距離を詰め、見事に交尾行動が確認された。

 この様子は後に報道発表して映像を提供しており、テレビのニュースなどで見た記憶がある方もいるだろう。さらに、その後、午後2時30分ごろ、午後5時30分ごろにそれぞれ1回ずつ、合計3回同居させ、うち1回目に1度、2回目に2度交尾行動が確認され、「相性」の良さもあり、事故なく交尾して同居が終了となった。

 翌2月28日にも、柵越しのお見合いを行ったが、リーリーのシンシンへの興味低下や、シンシンが受け入れ態勢を取らなくなるなどの行動の変化が見られ、2日間にわたるペアリングが終了となった。

 初回の交尾は、私を含めてスタッフが見守る中、旧パンダ舎のペアリングのための非公開放飼場で行われた。細胞診や血液データのタイミングとしては、まさに「その時」だったが、同居時にトラブルとなる可能性もあり、その場合は速やかに人工授精を実施するタイミングとして準備をしていたことは本当に良かったと思っている。

 2017年は初回の交尾時間が十分なもので、その後、数回の交尾も確実に観察されたことから、ある程度の確信はあった。だが、2013年の偽妊娠事例も踏まえ慎重な対応が必要であり、次は出産のXデーとその後の対応への準備が始まることとなった。

 この交尾は、これまでの数年間とは異なり、動物の行動や交尾回数・時間を含めて、「確度の高い」ものであった。2012年以来の同居と交尾については、報道機関向けに詳細に説明する必要があり、相手方が過度に期待しないように、冷静に事実を公表した。しかし数年ぶりの交尾確認でもあり、その後の出産予定についての関心が高まっていった。

母親をつぶらな瞳で見つめるシャンシャン
母親をつぶらな瞳で見つめるシャンシャン
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