問題は社会の側にある
結婚している、していない、子どもがいる、いない――。立場や考え方によって、見え方や感じ方が異なるのは当然かもしれない。だが、この「不公平感」をクローズアップすれば、とかく水掛け論になりがちだ。
「不公平感をめぐる状況は、問題の論点がすり替わってきているように見えます」
こう話すのは、“婚活”や“格差社会”という言葉を世に出したことでも知られる社会学者の山田昌弘さん(中央大学教授)。山田教授いわく、日本人は、制度や働く仕組みは「変えられない」という前提で考える傾向がある。そのため、社会に問題があるという発想にはなりづらく、とかく自己責任となりがちという。
制度や仕組みは変えられる
対してヨーロッパやアメリカでは、制度や働く仕組みは「変えられる」という前提で考える傾向が強い。働き方でいえば、労働時間はある程度、自分で決められるのが当たり前で、どんな人でも残業を断る権利や休みたい時に休む権利があるのが大前提。誰かが休んだ時に、その分の業務を補填するのは会社の責任で、特定の個人にそのしわ寄せが来るというのは、明らかにおかしいという話になる。
「つまり、制度は変えられないという前提で、どちらが損か得かを考えるのは、非常に日本人的な思考ともいえます。働く人が不平等感のない環境を整備するのは、本来会社の役割であるはずなのに、環境が変えられないと考える人が多いため、なぜか“私よりあの人の方が優遇されている”といった論調になってくる。文句を言う相手は本来、会社であるはず。このままでは、困っている人同士の分断が進むばかりです」(山田教授)
(ライター・松岡かすみ)
こちらの記事もおすすめ 来年4月から導入の“独身税”が日本崩壊を加速させるワケ 「余計に少子化進むだろ」「こども家庭庁をなくせば財源確保できる」の声も…。