仕事をカバーする人の収入アップは?
これまで何人もの休業中の業務をカバーしてきた女性は、こうため息をつく。
いわく、育休をとる人の手取りが減らないように給付金が出るなら、不在の間をカバーする人たちの手取りが増えるような手当がほしい。時短勤務の人の収入が増える策を講じるなら、帰った後に残って仕事をカバーする人の収入がアップする施策も考えてほしい。それが“公平”な対策ではないのか――。
女性は言う。
「心が狭いって思われるかもしれない。でも、どちらか一方を優遇すればするほど、職場の分断は深まって、育休や時短の人たちをあたたかくサポートする環境にはならないと思うんです」
同僚社員への追加手当
こうした不公平感を減らすために、育児休業中の社員の業務をカバーする同僚らに、手当などを支給する企業が幅広い業種で広がり始めている。厚生労働省は今年度から、育児休業中の同僚をフォローした社員を支援するため、中小企業への助成金の対象を広げ、同僚社員へ追加手当などを支給する場合にかかる費用を補助し始めた。男女ともに育休取得が広がるなか、業務を代替する社員のモチベーションの向上や、子育てしやすい職場づくりにつなげたい狙いだ。
だが働く単身者からは、こんな声も聞いた。
「手当ももちろんあってほしいですが、“独身休暇”もあっていいんじゃないかって思います。休業に入る人のカバーをしている側からすれば、“休みたいよ、私だって!”となって当然。同様に、“子どものいない夫婦休暇”もあってもいいのでは」
韓国では「非婚手当」
未婚率が上昇し、日本以上に深刻な少子化が進む韓国では、こうした不公平感の解消を目的に、「非婚手当」なる制度が一部企業で導入され始めている。一定の勤続年数を超える結婚していない社員を対象に、金銭や物品などの手当が支給されるという制度だ。2020年に30代男性の2人に1人が未婚、30代女性の未婚率は3割超と、未婚化が加速するなかで生まれた、新たな福利厚生のあり方といえる。