(写真はイメージ=GettyImages)
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 すばらしい会社、プロジェクト、組織をつくる方法。Uber、アップル、Amazon、Nike、TikTok、コカ・コーラなど世界を創り変える覇者達からマーケティングを任されるイギリスの起業家、スティーブン・バートレット氏は、「何も学ばなくても、特別なことをしなくても、簡単につくることができる」と説く。バートレット氏が直接体得した仕事と人生に効く33の重要原則をまとめた『執行長日記  THE DIARY OF A CEO』(サンマーク出版)から、「方法よりも人」を紹介する。

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自分ができなくてもできる人を探せばいい

 反対側の席に座っていたのは、リチャード・ブランソン。世界的に有名な起業家、冒険家、宇宙旅行者、そしてヴァージン・グループの創設者だ。私はマンハッタン中心部で開かれた伝記映画のプライベート試写会に参加し、翌日には『CEOの日記』のためにブランソンに2時間のインタビューを申し込んだ。
 

 私はディスレクシア(読み書き障害)で、学校では落ちこぼれだった。自分では、少し頭が悪い程度にしか思っていなかったが。足し算と引き算はどうにかできたが、それ以上複雑なことはお手上げだった。

 50歳くらいのときに役員会議に出席して、それはいいニュースなのか、それとも悪いニュースなのか尋ねた。すると取締役の1人に「ちょっと来てくれ、リチャード」と言われ、部屋を出たところで「純利益と粗利益の違いがわからないのか?」と訊かれた。

「わからない」私は正直に答えた。

 取締役は「本当か?」と驚きながらも、紙とマーカーを取り出して紙を青く塗り、そこに漁網を描いて、その中に小さな魚も描くと、「つまり網の中の魚が年度末の利益、そして周りの海、それが粗利益だ」と説明した。「なるほど」

 私はうなずいたが、たいして重要なことではない。経営者にとって重要なのは、その分野で最高の会社をつくれるかどうかだ。数字の計算は誰かがやってくれる。足し算や引き算は役に立つが、たとえできなくても、それほど心配はしない。できる人を探せばいいのだから。

 私は人付き合いが得意だ。人を信頼することができる。本当にいい人たちに囲まれている。ディスレクシアであるというのは、そういうことだ。権限を委任するほかに選択肢はなかった。

次のページ 何とも耳に心地よい告白だった