江尻祐子:最初に聞いたときはやはりドキッとしました。もしJALがDE&Iを掲げているということで、アメリカには着陸させないという事態になれば、安全安心にお客様を目的地にお届けできなくなります。では、私たちの取り組みが変わるかというと、やはり変わらない。大きな施策を進める際には、どうしてもマジョリティーの目線で物事が進みがちですが、それによって障壁が生まれたり、スタートラインが揃わないのであれば、それらを取り除くことが我々の役割。誰もが活躍できる環境を整えることは変わらないよね、と改めて確認をしました。何のためにDE&Iを推進しているのか、目的や意義を再認識したように思います。

相馬知子:結局のところ、人権意識がベースにないとDE&Iで競争力を高めることも難しいと思います。

付加価値が生まれる

山本真希:私たちはDE&Iをビジネス戦略の中核ととらえていますが、資生堂の倫理行動基準に、人権と多様性の尊重が明記されています。何が起きようと、個々の人権をきちんと守るという会社としての姿勢にブレはないはずです。ビューティーという商材は、多様なお客様に多様な価値観を提供していくことが使命ですので、DE&Iがなくなるのは考えにくいですね。

岩田泰典:私たちも同じです。DE&Iの本質は表層的なことではなく、異なる考え方を受容し、価値観をみんなで認めあうことで、それによって新たな付加価値が生まれる。これが本当の取り組みだと考えます。もっと従業員理解と浸透を深めていきながらやっていきたいですし、トランプ大統領の一連の発言や行動については、こうしたきっかけをもらったとして、ポジティブに捉えようと思っています。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2025年7月14日号より抜粋

こちらの記事もおすすめ 【もっと読む】ローソン、資生堂、JAL「DE&I」の現在地と課題 「キャリアが不連続でも活躍」フィンランドにヒントも
[AERA最新号はこちら]