
7月18日発売予定の植朗子著『鬼滅月想譚:『鬼滅の刃』無限城編の宿命論』(朝日新聞出版)は、新作劇場版「『鬼滅の刃』無限城編」にまつわる「戦いの組み合わせの謎」を解き明かす1冊だ。無限城編での「鬼殺隊と鬼との対戦の組み合わせ」は、この映画の見どころのひとつでもある。しかし、戦闘がなぜこの組み合わせになったのかという理由にはいくつかの謎が残る。
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そこで、この記事では無限城・猗窩座戦の発端となった「猗窩座vs煉獄杏寿郎」の戦いをふりかえり、戦いのつながりについて解説する。
(本記事は、植朗子著『鬼滅月想譚:『鬼滅の刃』無限城編の宿命論』(朝日新聞出版)から一部抜粋変更したものです)
【※以下の内容には、コミックスおよび劇場版のネタバレがわずかに含まれます】
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■炎柱・煉獄杏寿郎の「弔い合戦」
炭治郎と猗窩座の因縁は、あの「無限列車の戦い」に端を発している。今回の無限城での猗窩座との戦いには「煉獄の弔い合戦」という大きな意味があり、炭治郎が激しい怒りをぶつける場面が描かれる。
かつて、猗窩座は炭治郎のことを「弱者」と蔑み、戦闘においても注視することすらなかった。しかし、煉獄の死を乗り越えて強くなった炭治郎に、猗窩座はしだいに関心を抱くようになる。さらに、炭治郎の兄弟子にあたる水柱・冨岡義勇との共闘が、猗窩座の心を激しく揺り動かしていった。
■猗窩座の「共感」にまつわる謎
猗窩座は無限列車の戦いにおいて、「おしゃべり好き」な姿を見せていた。他の鬼たちが集結した、通称「上弦パワハラ会議」では、他の鬼との会話を極力避けていた猗窩座は、敵である鬼殺隊の前では饒舌なのだ。
さらに、無限城ではこの「鬼として、人としての会話」を通じて、猗窩座は義勇と炭治郎の言動に強く心を動かされていく。しかし、ここで大きな疑問がわきおこる。戦闘中に、炭治郎と義勇に「共感」を示す猗窩座は、なぜ無限列車の戦いの時には、煉獄杏寿郎に共感することがなかったのか?
■猗窩座と煉獄杏寿郎の共通点
実は猗窩座と煉獄の間には、かつて「不治の病の家族」がいたという共通点があった。“善き息子”であった彼らは、死が差し迫る親のそばで、子どもらしい甘えも、寂しさも口にすることがなかったようだ。親の回復を強く願いながら、親の心身に寄り添うことに、幼い彼らが心を砕いていた様子がかいま見える。
だが、運命は皮肉なもので、同種の悲しみを味わったはずの煉獄は「鬼殺隊の柱」として人間に害をなす鬼を駆逐する剣士となり、おぞましい人間たちの手で大切な人を奪われた優しい少年は「上弦の鬼・猗窩座」になってしまった。敵対することになった彼らの運命は、いつ分かたれたのか。