
事例集の背景がわかったところで、そこに載っている42銘柄の顔ぶれが知りたい!
日本には3826社(2025年3月31日現在)が上場しており、数としては過去最高を記録。これだけ多いと優良な銘柄も埋もれてしまい、個人投資家が気づかないケースも多くなる。
特に、小さめの企業は情報発信が行き届かない場合もある。そんな中、「IR(投資家向け広報)に積極的な会社はそれだけで投資候補として前向きに見ていきたい」と語るのは、金融ジャーナリストの岡村友哉さん。
「投資家や株主に向けて自社の経営方針や取り組みを発信するのは、IR(投資家向け広報)担当者ががんばれば、大金をかけずともできること。
地道なIR活動が市場の認知につながり、株価上昇につながる可能性もあるわけです。
IRに積極的かどうかは立派な投資基準の一つ。逆に業績に関する情報を非開示にするなど、IRに消極的な姿勢を見せた銘柄は株価が下がる時代です」
東証の事例集に載っているのはIRに積極的、もしくは積極的になろうとしている42銘柄ということである。
これらを予想配当利回りの高い順に表にまとめた(本誌が勝手に作成したもので、東証は無関係)。
特大株主還元で上昇

最近、話題になった銘柄といえばアパレル大手のTSIホールディングス(表の19位)。2025年1月に固定資産売却からの特別利益を計上した。
配当性向30%以上の方針に従い、2025年2月期の配当を15円から65円に大幅増配。
自社株買いを100億円から150億円に引き上げ、株価が上昇した。2026年2月期の1株配当(予想)は40円だ。
「最近はアクティビスト(モノ言う株主)に目をつけられる前に先手を打ち、株主還元の目標値を設定して株価を引き上げようとする企業が増えました。
特に大規模な自社株買いを予告する企業は、決算発表前に業績悪化を見越した株のカラ売りも少なくなるため、株価の安定につながります」
東証の事例集には21位の山陰合同銀行、25位の山梨中央銀行など地方銀行も入っている。
「地銀の小型株は非常に割安でしたが、やはりアクティビストによる株主還元要求で株価が上がるケースが目立ちます。
40位の千葉興業銀行は、2022年までPBR(株価純資産倍率)が0.1倍台でしたが、投資ファンドが株を買い集めたことで急騰しました」
