原発の再稼働につれて報道も減っている

 こんなひどい計画が了承されるのは、再稼働ありきで、地元住民を「騙す」ために作られた避難計画だからである。柏崎刈羽原発で作られた電力は東京電力により首都圏に送られる。住民のための発電所ではないのに住民の安全を無視してなぜ動かすのか。

 こんな避難計画のまま再稼働を承認する自治体の長がいるとすれば、まさにカネのために住民を売る大罪人だと言って良い。

 私がさらに問題だと考えるのは、マスコミが、この欠陥についてほとんど報じないことだ。福島の事故後数年の間は、各地の原発の避難計画について、かなり詳細な報道がなされた。しかし、原発の再稼働が進むにつれ、避難計画についての報道は激減した。

 今回も、避難計画が了承されたことで再稼働の手続きが一歩進んだという経済産業省の発表をそのまま垂れ流している記事がほとんどだ。大スポンサーの原子力ムラの手前、強い批判はできないからなのだが、もはや報道機関としての役割を放棄したと言っても良い。

 本来なら、新聞の1面で大きな見出しをつけて、避難計画の欠陥を大々的に報じるべきだったがそれをしない。原子力規制委員会が避難計画を審査していないという事実さえ伝えないから、ほとんどの国民は知らないままだ。

 原発については、柏崎刈羽に限らず、避難計画以外にも大きな問題が山積している。

 使用済み核燃料の最終処分はほぼ不可能だ。最終処分場を受け入れる地域がない。各原発敷地内で永久保管するしかないが、住民の手前そんなことは口にもできず、そのうちできますと言い続けている。それを非難する記事もほとんど見かけなくなった。なぜ、最終処分場ができるという前提に立ったままの記事を書き続けるのだろう。経産省の担当官僚でさえ、そんなことはできないことは百も承知で、自分の在任期間中は演技を続けているだけなのに。

 また、事故が起きた時の避難計画を作っているのに、事故が起きた時の損害賠償については、昔の制度のまま放置していることも知られていない。政府が一種の保険を運営しているが、それで支払われるのは、原発1基あたり最大1200億円だ。

 福島第一原発の事故対応費用は、廃炉、賠償、除染・中間貯蔵などを含めて約23.8兆円という試算(2024年、資源エネルギー庁の発電コスト検証WG)がある。1200億円は1%にも満たない。しかも、事故対応費用は今後も時間とともに膨らんでいくのは必至だ。

 この事実もほとんど報道されてないので、多くの人は知らないままだ。

 さらに、そもそも日本の原発の耐震性が、民間の耐震住宅よりもはるかに低いこともほとんど報じられていない。三井ホームの耐震住宅が5115ガル(ガルは加速度。揺れの強さを示す)、住友林業では3406ガルに耐えられるのに、日本の原発の基準地震動(耐震性と考えて良い)は、高くても1000ガル程度でしかない。これについて、電力会社は、原発の敷地内に限ってはそれほど大きな揺れは生じないと言い続けている。南海トラフ地震の震源域に入っている四国電力伊方原発については、何と、原発直下で南海トラフ地震が起きた時でさえ、大して揺れないと言うのだから驚きだ。

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