6月から猛暑が続いている。米不足が始まった2023年も厳しい暑さで稲は高温障害となり、実質的な収穫量が減った(写真はイメージ/gettyimages)
6月から猛暑が続いている。米不足が始まった2023年も厳しい暑さで稲は高温障害となり、実質的な収穫量が減った(写真はイメージ/gettyimages)
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 今夏も猛暑になりそうだ。一昨年の記録的な猛暑は米不足を引き起こし、米の価格は高騰した。農家や流通現場に話を聞くと、現在まで続く「米不足」の予兆はすでにあったという。

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あの夏、2割の稲が枯れた


 日本有数の米どころ、新潟県南魚沼市でも7月に入って連日30度を超える暑さが続いている。暑さは全国的で埼玉の水田ではザリガニが茹で上がった、というニュースもあった。

「今夏も猛暑となりそうで、米の出来が心配です」

 南魚沼市で無農薬コシヒカリなどを栽培する笛木竜也さんはそう言って表情を曇らせた。「今のところ水は足りていますが……」

 現在まで続く米不足が始まったのは2年前、2023年の夏だった。南魚沼市も連日の猛暑に見舞われた。笛木さんはあの夏をこう振り返る。

「水不足で約2割の稲が枯れた。7月19日以降、お盆明けまでまとまった雨は降らなかった」

「出穂の時期」が極端に暑いと…

 新潟県作物研究センターによると、米作りで最も重要なのは稲の穂が出る「出穂(しゅっすい)」の時期の環境だ。前出の笛木さんが育てるコシヒカリの場合、出穂のピークは7月下旬から8月上旬。「この時期が極端に暑いと、稲の実である米粒の中に順調にでんぷんを溜め込むことができない。典型的な高温障害は、米が白く濁ってしまう『白未熟粒』で、等級が落ちてしまう」(新潟県作物研究センターの担当者)

 水路の水は枯れた。水を入れたタンクをトラックで田んぼに運び、水を撒いたものの、「一部の土が湿った程度」。

「なんとか収穫できた米も、猛暑による『高温障害』で、出来がよくありませんでした」(笛木さん)

 妻のこずえさんが鮮明に覚えているのは、取れた米が「白かった」ことだ。

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