
2020年、コロナ禍でのひと夏を過ごした若者たちを描く映画「この夏の星を見る」。誰もが思い出す、あの夏とそれが残したものとは──。AERA 2025年7月7日号より。
【写真】コロナ禍で部活動を制限された亜紗(桜田ひより)は──? 映画「この夏の星を見る」より
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──映画「この夏の星を見る」は辻村深月の青春小説が原作だ。高校の天文部に所属する亜紗(桜田ひより)はコロナ禍で部活動が制限されたもどかしさのなか、全国の中高生をリモート会議でつなぐ天体観測「スターキャッチコンテスト」の実施を思いつく。
山元環監督(以下、山元):辻村先生の文章はものすごい解像度で書かれているんです。このキャラクターたちをどう魅力的に映画で描くことができるか、がまず課題でした。
桜田ひより(以下、桜田):私も以前から辻村先生の作品を読ませていただいて、監督のおっしゃるとおり解像度がすごく高くて。原作と同じベクトルと熱量で亜紗を研究し、愛していかないといけないな、とまず思いました。
山元:桜田さんには真ん中にドシッと構えていただいたので、現場でもめちゃくちゃ頼りにしていました。
桜田:亜紗は自分の理想を詰め込んだキャラクターでした。真っすぐで人を動かす原動力があって行動に移すスピード感がある。こういう子がクラスにいたらすごく頼もしかっただろうし、自分ももっと「青春」というものを味わえただろうな、と。
夜空を想像して演じる
──夜空を望遠鏡でのぞきながら星を探す「スターキャッチコンテスト」。実際に競技として行われているが、映画的なおもしろさを出すための工夫や苦労もあったという。
山元:暗すぎて夜には撮影ができないので俳優のみなさんには昼間に夜空を想像しながら演じてもらいました。
桜田:でも難しさはあまり感じなかったです。まぶしい顔していないか少し心配だったくらいでした。スターキャッチのシーンはスピード感があってカッコよくて、引き込まれる感覚があると思います。
山元:星って本当に奥が深いんですよね。経験値を積まないと捉えられない現象が多い。星って難しい!っていうことがよくわかりました。
桜田:確かにそう思いました。
──5年前の夏、山元監督は27歳、桜田さんは17歳。あの夏をどう過ごしたのだろう?
山元:実は商業映画のデビュー作を準備していたんですがコロナで飛んじゃったんです。でもあんまり腐る気持ちはなかった。腐っていてもこの不安は絶対に解消できない。この時代とどう向き合っていくかと思ったときに無くなったことを嘆いていてもしゃあない、「なんかしたい!」って自分で自主制作映画を作っちゃいました。それがあったからこそ、この作品にもつながったんです。桜田さんは高校生だったんですよね?
