
山田:干し芋と納豆、あと豆腐の生活。やせるために炭水化物を1カ月食べないようにしていましたが、それはこの映画にとってはプラスアルファみたいなもの。それよりも、安慶名と山下がどうやって生きてきたんだろうということをひたすら考えました。生き抜こうとする人間の底力をどう見せるかは意識しましたね。
平:そうでしたね。
山田:あと、母親のことを安慶名が山下に話す場面は、すごくリアルに感じました。安慶名は病気の母を家に残し、母が生きているか死んでいるか分からない状態で木の上にいる。家に帰ったとき、もし母が死んでいたとしたら悲しいのか、それとも戦争が母を楽にしてくれたと嬉しいのか。どう思うのか分からない気持ちでいる安慶名のセリフや感情は、実際に僕の親父の体調が悪いこともあって、余計にシンクロしました。
平:あの場面は、僕自身も投影しつつ書いたんです。実家だったり、地元だったり、自分の国だったり、みんなそれぞれ自分の帰る場所があると思いますが、その場所が嫌いだったり憎かったりもする。でも必ず愛情は残っている。僕の場合、それが沖縄という場所なんです。僕は沖縄から出たくても出られなかったコンプレックスがあった。嫌だけどここしかないよな、という気持ちがあったんです。コンプレックスを強く持っている人ほど、安慶名には共感すると思いますね。
(構成/編集部・大川恵実)

※AERA 2025年6月23日号より抜粋
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