
平:僕も佐次田さんの次男の方とお話しする機会があったんですけど、そのときに親父さんがどんな話をしていたのか聞いたんです。そうしたら、結構面白おかしく話してたそうなんですよね。たとえば堤真一さんが演じた上官の山下は、山口静雄さんという方がモデルになっているんですが、山口さんがずっと飢餓状態で木の根っこで寝ていたとき、佐次田さんが話しかけても全然返事もしなかったそうです。でも横にハブがいたら、跳び上がって木の上まで逃げてきた。「全然動けんじゃねえか(笑)」と。生き延びることは壮絶なんですが、クローズアップしてみると滑稽に見えることはある。それは意識して作りましたし、この映画のユニークなところです。
山田:ウェットになり過ぎないように、監督とも話し合いましたよね。
平:そう、それで泣く場面を少し減らしました。
山田:思わぬところで涙があふれそうになった場面があって。夢の中シーンで、与那嶺(安慶名の親友)に「海に行けたらそれでいい」と話すシーンがあるんですけど、台本にも「涙を浮かべる」と書かれていない。あそこであんな風に感情があふれるとは思っていなかったです。でも、与那嶺役の津波(竜斗)くんと話していたら自然とそういう感情になって。ちゃんと流れを追って、その中に存在できているということだから、ああ、相手が津波くんでよかったなと思いました。僕はすごく好きなシーンになりました。
平:あの場面は設計外でした。山田裕貴さんという俳優に対して、津波くんも死ぬ気でお芝居に向き合って演じて、お互いが呼応した結果、僕も考えてなかった感情が出てきてましたよね。この場面は次のシーンにいく準備段階だったのですが、それどころではない場面になりました。「印象つよっ!」って(笑)。役作りで言うと、裕貴さんは現場で干し芋を食べてましたよね。