通所は重要な社会参加の機会

 そしてもうひとつは、「18歳の壁」の影響により、医療的ケア児者の日中の通う福祉施設(通所先)や短期入所施設が不足していることです。

 特別支援学校を卒業後に通所先が見つからない場合、多くの子どもは自宅で過ごすことになると思います。私たち保護者側からすると通所先はつい「預け先」と見てしまうのですが、実は子どもたちにとっては重要な社会参加の機会です。ひとりひとりの障害に合わせたサポートを受け、1日何円という世界ですが工賃も発生しています。自宅にこもることはそういう機会を失い、すべてが停滞してしまうことになるのです。

睡眠不足はメンタル不調に直結

 また、保護者側からすると、日中子どもと2人きりで過ごすのは、家庭内でケアを抱え込み孤立しやすい環境になります。18歳以上に限ったことではありませんが、この1年ほどの間には、医療的ケア児が命を落とし、保護者が逮捕されるという痛ましい事件が複数ありました。母親も人間なので、どんなにかわいい子どもであっても寝不足や追い詰められる状況が続くと正常な判断ができなくなってしまうのです。私はこの事件の背景には、子どもの預け先など支援体制につながることができずに孤立してしまったことと、母親の睡眠不足が大きく関係していたと考えています。睡眠不足はメンタルの不調に直結するのです。

 医療的ケアは決して我が家の長女のように生まれた時から障害のある子どもだけが必要なわけではありません。たとえば、脳卒中などの後遺症で胃ろうから注入が必要になったり、ご高齢の方が多く入院している療養病棟では長女と同じケアを受けている方がとても多いのです。年齢や病態に関わらず、誰でも同条件で利用できる一本化した制度の確立が必要だと思います。たとえば、障害福祉に関する法律と介護保険法のサービスの統合などは、私は今後の少子高齢化にも大きなメリットがあると考えています。0歳から高齢者まで、本当の「切れ目のない支援」の体制づくりが求められています。

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