千日手指し直し局に勝利後、感想戦に臨む藤井聡太名人(右)。左手前は永瀬拓矢九段=2025年5月30日、茨城県古河市
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年6月16日号より。

【貴重写真】和服じゃない!スマホ片手にデニム姿の藤井聡太さん

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 藤井聡太名人(22)に永瀬拓矢九段(32)が挑戦した第83期名人戦。第5局は5月29、30日に茨城県古河市でおこなわれ、千日手指し直しの末に、藤井が勝利。4勝1敗2千日手で防衛、3連覇を達成した。

「シリーズを通してやはり、非常に難しい局面が多かったので。そういう局面をいろいろ考えられたことはすごく充実した時間だったのかなと思いますし。いまの自分にまだ足りていないところというのも、見えてきたというところもあったかなと思います」

 藤井はいつものように、おごることなく謙虚に激闘を振り返った。

 時代を代表する名人に対して、充実いちじるしい実力者がいどみ、一局一局はどれも好勝負。今期もまた実に「名人戦らしい名人戦」だったといえるのではないか。結果こそ出なかったが、永瀬の戦いぶりも見事だった。永瀬は最近、藤井以外にはほとんど負けていない。だからこそ、藤井の強さがいっそう際立つ。

 将棋界の規定では名人位を5期獲得した棋士には、永世名人の資格が与えられる。直近では羽生善治九段が十九世名人資格者だ。史上最年少20歳で名人位に就いた藤井は、あと2期続けて防衛すれば、史上最年少で永世名人(二十世名人)となる。

「永世名人というのは、あまり具体的な目標として意識するという感じではないんですけれど。永世名人というものに対する漠然とした憧れのようなものは、以前からあるというところはあったので。やはりそれに今後少しでも近づいていけるように、より実力をつけていかなくてはいけないという気持ちは持っています」(藤井)

 藤井は現時点ですでに、大棋士と呼ばれるにふさわしい実績を持っている。その上でこの先、永世名人ともなれば、江戸時代から続く将棋史の上で、ひときわ輝く存在となりそうだ。(ライター・松本博文)

AERA 2025年6月16日号

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