コロナ禍以降は職場の飲み会も減り、同僚たちとのコミュニケーションの機会が減っている(photo 写真映像部)

「飲みニケーション」が消滅

 コロナ禍前は「飲みニケーション」がまだ少し残っていたが、コロナ禍以降は部下を飲みにも誘いづらい。若手との接触は特に気をつかう。歓送迎会はあるが、「2時間以内で1次会のみ」が職場のルールのため、管理職として乾杯のあいさつをしただけで、アルコールが回らないうちにお開きになる。男性は言う。

「正直物足りないんですけど、かといってルールを破って部下を2次会にも誘えません。若い人どうしで2次会に行くのを見送る時は孤独を感じますね」

ハラスメントが怖いから

 部下との個別面談は数カ月に一度あるが、男性はそれ以外に余計なことは話さないようにしているという。

「ハラスメントも怖いですから。一番いいのはしゃべらないこと。時代にアジャストしていかないと生きていけませんが、令和の管理職はつらいですね」

 職場で孤独を感じているのは管理職だけではない。

 現在リモートワーク中心で働いているウェブデザイナーの30代女性は、在宅勤務中ではなく、月に数回出社した時に孤独を感じるという。

「フリーアドレスのため、同じチームの出社組の人たちが普段座っている場所やメンバーが分からず、気が付くとチームの人たちの周囲の席は全て埋まっていて、自分だけ離れた場所でポツンと座ることもありました」

 在宅勤務に入る前はランチや休憩時間もチームメンバーと一緒に過ごしていた。しかし今は過ごし方もばらばらで、飲み会の頻度も減っており、女性は「これは出社組のメンバーの間でコミュニケーションを深めるフェーズが終わってしまった証拠」だと考えた。

「自分はまだチームのメンバーと打ち解けられていないのに……と取り残された感じがして孤独感が募りました」

孤独感は仕事やメンタルに影響

 女性は出社する意欲が減り、今はほぼ在宅勤務で過ごしている。その理由について女性はこう吐露した。

「チームの中で孤立した感じになるよりは、自宅で一人の環境で仕事をしているほうが孤独を感じずに済みますから」

 「職場の孤独」の実態調査を担当した「Job総研」の高木理子さんは「孤独感から『不安・ストレスの増加』や『帰属意識・モチベーションの低下』など、仕事やメンタルへの影響もみられます。しかし、孤独感を感じたとしても『特に何もしていない』⼈が多数で、その背景には諦めの気持ちもあるようです」と話す。

 調査では、職場の孤独は「転職を考えるきっかけ」にもなる⼀⽅、職場には孤⽴していることに”気づいてもらえない⼈”がいることも明らかになった。

 孤独感を軽減するにはどうすればいいのか。高木さんはこう指摘する。

「今回の調査で『リラックスできる』『気軽に会話できる対⾯』の場が必要との回答が多かったことからも、気持ちの⼊れ替えをするための”1⼈になれる空間”づくりに加え、対⾯でカジュアルにコミュニケーションを図る機会を増やしていくことが⼤切と考えています」

(AERA編集部・渡辺 豪)

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