
「専業主婦」という言葉は、今の時代にネガティブに響くのではないか――。AERAでは「専業主婦」についてのアンケートを実施。呼称についても意見を募った。
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「専業主婦って、家事・育児をすべてやって、家族のスケジュール管理まで役割は多岐にわたるのに、『専業主婦』という言葉には仕事に繋がる表現がない。だからその実態を理解してもらいにくいと思います」
東京都在住の専業主婦(39)は、こう話す。早朝から家族の世話に追われ、子どもたちを送り出した後は、家事を済ませて食材の買い出しに行ったり、郵便局に行ったり。あっという間に午後になり、子どもたちが帰ってきてからは、習い事の送迎や夕飯の準備に追われる。働く人が仕事の合間にコーヒーを飲むような時間すらないまま、夜になってしまうのが常だ。
なのに、その慌ただしさを理解されにくいと感じるのは、やはり「専業主婦」という呼称に問題があるのではないか。AERAでは5月、「専業主婦」についてのアンケートを実施。呼称についても意見を募った。
家事・育児といった家庭内のことを担当していることが明確にわかる新名称を望む声が多いなか、東京都の自営業の男性(59)はこう提案する。

結婚は「M&A」、専業主婦(夫)は「家庭内総務」
「今は、結婚のことをM&A、親子関係を株式100%子会社と表現したりするので主婦(主夫)は、『家庭内総務』つまり、何でも屋さんでどうでしょう。何にもしていないなら『家庭内フリーター』。旦那に指示だけを出しているなら『旦那管理職』」
“主夫”経験者は、どのような意見だろうか。『妻に稼がれる夫のジレンマ——共働き夫婦の性別役割意識をめぐって』の著者で千葉科学大学危機管理学部教授(家族社会学)の小西一禎さんに話を聞いた。
共同通信社の政治記者だった小西さんは2017年末、米国転勤が決まった妻に同行するために、会社の休職制度を使って渡米。現地では子ども2人を育てる「駐在員の夫=駐夫(ちゅうおっと)」として約3年を過ごした。その後、休職期間が満期となったタイミングで退職し、「主夫」として家事・育児を引き続き担ってきた経験がある。
「駐夫時代に、主婦業がものすごく大変なことだと気づきました。とにかくタスクが多くて、極めて生産的で創造的な仕事です」
子どもたちの好物の手捏ねハンバーグやメンチカツ、鶏の丸焼きも作った。タマネギも最初はサイコロ大にしか切れなかったが、次第に数ミリ単位で刻めるようになり、家族全体のスケジュールや健康管理もうまくこなせるようになったという。「家族のために過ごす時間が自分の幸せに繋がりました。『家族の幸せクリエーター』として家の中心となりました」と振り返る。