illustration:小迎裕美子

「専業」だから押し付けていいのか

 若年層を中心にジェンダーに対する意識が大きく変化し、性別による固定観念に疑問を持つ人が増えている。小西さんは、こう指摘する。

「社会が少しずつ変化していく中で『専業主婦・主夫』という言葉がその流れを堰き止めているようにも思えます。この言葉が今も現存していてその役割が固定していること自体が問題です。専業主婦・主夫はもっと自信をもって自分の仕事や存在をアピールしていいですし、『専業』だからといって一方に家事を全部押し付けている人がいれば、そもそもそれでよいのかを考えるところから始めたらいいでしょう」

 そこから夫婦間の役割分担を見直したり、思考も時間も互いに寄り添えるようになったりしたら、誰もがもっと生きやすい社会になるのだろう。

「専業主婦・主夫という言葉の代わりに、社会的にいい言葉を広めるのが大きな一歩になるでしょうね」と小西さん。

「ファミリー」や「ホーム」に「ディレクター」「プロデューサー」「サポーター」「ビルダー」などを組み合わせ、温かみのある言葉にするのはどうかというのが、小西案だ。

専業主婦のイメージは「悪い」

 AERAアンケートでも小西さんのように専業主婦の役割を肯定的にとらえた上での新名称の提案が多かった一方で、こんな声も寄せられた。

「主婦(主夫)の仕事は仕事だと思っていない。仕事じゃないから『専業主婦・主夫』でいい。敢えて言うなら『働かない大人』。専業主婦そのものを否定しているわけではないのですが、なりたい人はなればいい」

AERAアンケートは5月にオンラインで実施。専業主婦(主夫)を「働いていない、もしくは扶養の範囲内で働く人」としました

 そう語ったのは、神奈川県の元エンジニアの女性(66)。40年間、仕事をしてきたといい、「保育園に預けられた娘たちは『可哀想』と言われたけど、その娘も今は働いています」と話す。専業主婦のイメージは「悪い」と言いつつ、「私には『働かない』という選択肢がなかっただけ」ともこぼす。

 経済状況の悪化や、働く人が増えたことによる影響で「一生ずっと専業主婦(主夫)」を選択する人は、かつてほど多くない時代になった。

もっと自由に、どうありたいかを考える

 長野県の学校職員の女性(49)は、「専業主婦には、相当グラデーションがある。だから、その時々で分けるといい。『家事専業人』と『家事兼業人』というように。介護などで限定的になる人は『一時的家事兼業人』とか。大事なのは自主選択しているという点です」と話す。

 明確に「働きたくない」という人もいる。

「そういう人は『選択的家事専業人』として生きればいいと思います」(学校職員の女性)

 自分がどうありたいのか、「専業主婦」という言葉を離れてひとりひとり「自由」に考える時代になっているということだろう。

(AERA編集部・大崎百紀)

こちらの記事もおすすめ “バリキャリマウント”に沈黙の令和の専業主婦 家事・育児のやりがい実感もなぜか肩身が狭い
[AERA最新号はこちら]