愛憎どちらに傾くにしても、洋楽ファンにとって「ロッキング・オン」は無視できない雑誌だった。何しろ誌面が熱かった。新しいバンドが登場するたびに、大げさなキャッチが飛び交う。前のめりで扇情的な煽り方は、今も大きな影響を残している。
本書はその2代目編集長による回顧録。だが、意外なほど客観的な視点で編集部にいた7年間を振り返っている。それはロック神話が生きていた時代に、「金儲けに走らないと面白くもなんともねえよ」と社員公募に応募した著者の資質によるのだろう。具体的なビジネスモデルや部数への言及も多い。とはいえ、著者が金儲けの道具としてだけロックを見ていたかというと、そうではない。オアシスやニルヴァーナなどの取材エピソードは控えめな筆致ながらも、親しみがこもって熱い。 (山口浩司)
※週刊朝日 2016年12月30日号