たうち・まなぶ◆1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

 現在ではその需要が減退し、むしろ市場では投げ売りが起きている。この需要の減退については何年も前から指摘されていたのだが、どういうわけか日本政府の対応は鈍い。

 アメリカでは、トランプ大統領が推進する相互関税の影響で米国債の投げ売りが進み金利が急上昇した際、90日間の関税停止を発表するなど敏感に反応していた。

 しかし、5月16日、格付け機関のムーディーズは金利上昇による利払い費の拡大懸念などから、アメリカ国債の格付けを最高ランクの「Aaa」から1段下の「Aa1」に格下げした。

 日本政府も当然、利払いが増えれば格下げのリスクに直面する。国債全体の発行量が多すぎることで金利が上昇しているのであれば、どうしようもないのだが、投資家のニーズがない期間の国債を発行して金利が上がっているのであれば、それに対してはもっと敏感に対応すべきではないだろうか。

 長期間、日本銀行による金利コントロールが行われたことで、政府は市場の声を十分に聞き取る能力を失ってしまったのかもしれない。格付けが下がれば日本国債の国際的な担保価値が下がり、国内の金融機関が大混乱に陥る可能性もある。

 日本政府がすぐに動かないのであれば、私たちが日本国債を買うというのも手だ。しかし、現状では変動10年や固定5年などの個人向け国債以外は、個人では買いにくい。

 日本の証券会社のみなさん、30年国債や40年国債を、個人でも買えるようにしてもらえませんか。

AERA 2025年6月2日号

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