シロウトの執筆生活は我慢の連鎖、数珠つなぎです。

 改めて編集者は偉い。原稿を送ると必ずそれについての感想を伝えてくれますから。それが担当として「当然のこと」とおっしゃるかもしれませんが、どうにもならない駄文でも腐すでなく、過剰なヨイショでもなく、何気ない一言を添えるのは容易なことではありません。きっと我慢されてることもあるでしょう。申し訳ない。

 そう、かの立川談志師匠は自分の口に合わない食べ物屋さんに色紙を頼まれたとき「我慢して食え」と書いたそうです。素直に「不味い」とは言わず、「美味い」ともおだてず、ただ「我慢しろ」。「我慢するほどの味なの? ちょっと食べてみようか……」とむしろ興味がわくこともあるでしょう。真実を伝えながらも、受け手の興味も引き出す素晴らしい言葉です。

 ということで、拙著『ドグラ・まくら』をあえてPRするならば「我慢して読め」の一言に尽きます。「ザ・ガマン」の「放尿我慢競争」に出ていた学生のように、限界を超えて初めて分かる快感があるかも。我慢してめくるページの先には目眩く世界があるかもしれません。もしそんな世界がどこにもなかったとしたら……そうですね、さっきも言った通り、みんな朝日新聞出版のせい。

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