私がいつも締め切りに追われて唸っていると、弟子が傍らで退屈そうにあくびしてたりします。そんなとき、「なぜ師匠がこんな思いをしてるのにお前たちはのうのうとしているのか‼」と怒鳴りつけたくなる。でも今はパワハラだなんだと喧しい時代なので、そこは我慢しますが、何年か前に私もとうとう我慢の限界を迎えこんな提案をしてみました。
「お前らもなんか書け! 週一回、俺がお題を出すから1000字以上でそれについて書くように!」
ということで、私は前座修業の一環として弟子に作文を課すようになりました。前座の4〜5年間休むことなく書き続けるのです。文章が上手いのもいれば下手なヤツもいます。下手な文を読むには我慢が要ります。たとえば「私は昨日、昼ごはんを食べてみました」みたいな気持ち悪い文が平気で送られてくるのです。「みました」ってなんだよ? お前は普段昼ごはん食べてないのかよ? お前はその日だけ食べたのか? それ以前に、お前は文を推敲しないのか? なんか言ってやろうかと思いましたが、私にも時間の限りがあるのでいちいち添削したり感想を伝えるのは早々に諦め、とりあえず受け止めることにしました。アイツらは常に書きっぱなし。そうしたらより一層我慢を強いられるようになりました。
なかにはなかなか上手いことを書く者もいます。「今回は面白かったよ」と伝えることもあります。悔しいから本当は言いたくないけど、それを伝えないと「俺はなんて小さい人間なんだ」と自分が嫌になっちゃうので、そこは我慢して褒めます。どうかすると「ちょっとパクってやろうかな」なんてやましい気持ちがわきますが、そこも我慢します。ここは我慢しないと師匠としての沽券にかかわりますから。