
タクシーやハイヤーの運転に必要な「普通2種免許」が最短3日で取得できる──。警察庁が4月17日に明らかにした、受講すべき教習時限数を削減する道路交通法施行規則改正案。「タクシー運転手が不足している」ことへの対策として教習時限数を現行の40時限から29時限に減らし、取得までの最短教習日数は6日から3日に短縮されるというもので、5月17日まで行ったパブリックコメント(意見公募)の結果公表を経て、9月1日の施行をめざすという。人材確保のために免許取得のハードルを下げた形だが、一方で「命に関わることなのに」などと安全面について懸念の声もあがる。今回の改正案、私たち利用者はどう見るべきなのだろうか。
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「改正することに本当に意味があるのか、理解できないんです」
こう話すのは、互助交通有限会社・代表取締役社長の中澤睦雄さん(63)。昭和30(1955)年創業のタクシー会社として東京都内で80台のタクシーを走らせてきた同社。2021年にタクシー事業を終了したが、入社以来約30年にわたってタクシー業界に関わってきた中澤さんいわく、「次の活動を模索中ですが、ハートはタクシー業界に残したままです」。そんな中澤さんは、今回の改正案をどう見ているのか。
中澤さんがまず引っかかるのが、今回の改正の前提となっている「タクシー業界は人手不足」という点だ。国土交通省によると2022年度のタクシーの運転者数は24万1951人と、10年間で12万人余り減少しているのだという。たしかに地方都市を含めた国全体としてはタクシー運転手が充足しているとは言えないだろう。しかし、大都市圏の状況に目を向けてみると、また違った面が見えてくると、中澤さんは言う。
「大都市では不足していない」
「地方での運転手不足は課題としてあるでしょう。ただ、東京など大都市において、『タクシーが不足している』とは言えないと思います」
中澤さんが着目するのは、タクシーの「実車率」。タクシーの走行距離の中で実際に客が乗っている距離の割合だ。東京ハイヤー・タクシー協会の事業報告によると、東京都の2023年度の実車率(年間平均)は23区と武蔵野市、三鷹市の「特別区・武三地区」で47.9%、「三多摩地区」では43.7%。同様に、大阪タクシー協会によると大阪府では47.5%(2022年)だ。