エマーソン大学を首席で卒業した関根麻里さん。卒業式で充実した表情をみせる(photo 本人提供)

素直に”Thank you"を 

 入学早々、「そのバッグ可愛いね」とアメリカ人の友達に言われた時、「いや、いや、いや!安かったのー」とこれまで通りにリアクションをして、「No, No, No!」と返したら、「私の意見を否定するの?」って言われてしまって。いや、そうじゃないから再び「No, No, No!」と弁解して(苦笑)。その友人は、あえて指摘したと言ってくれました。国の文化は、時と場所と手段によって伝わり方が全く異なることを痛感し、「まさにこれがコミュニケーションだ」と思った出来事でした。それ以降は、褒められたら素直に“Thank you”と言うようになりましたね。日本でも、「ありがとうございます。私も気に入っているんですよ!」と返すようになりました。

――改めてアメリカでの3年間は、ご自身の価値観にどう影響を与えていると思いますか?

「発想の転換の大切さ」を身をもって経験したことですね。大学では寮生活を送り、ルームメイトはブラジルから来た明るい女性だったのですが、私たちの部屋は常にドアがストッパーで止められ、開放されていました。しかもエレベーターの扉の前だったので、とにかく人の出入りが激しくて(苦笑)。部屋に戻った時の決まり文句が、「ただいま。初めまして、ルームメイトの麻里です」でした。私はひとりっ子で、これまで静かな空間で過ごす機会が多かったのに、自室で心安らぐことができなくて最初は戸惑いました。でも、「考え方を変えればいいんだ!」と思うに至りました。自室は社交場。1人になりたかったら図書館やカフェに行けばいいんだ、って。そう切り替えたら一気に楽になりました。ストレスを感じた時、「嫌だ」と思いながら何もしないでいると、どんどんネガティブになります。でも、考え方を少し変えるだけで、その状況を楽しめることを知りました。生活する上で柔軟な考え方を学んだのは、海外の大学に行ったからこそ習得できたサバイバルスキルです。

国際電話で愛犬の息づかいを聞く

――今も当時の友人知人とは付き合いがありますか?

 もちろんです! 皆それぞれの場所で活動、活躍しています。ちょうど大学に行き始めた時にFacebookができたのですが、最初は限られた大学の学生しか使えませんでした。なので、家族とは国際電話でたまに話していましたが、大好きな飼い犬が恋しくて恋しくて……。親に頼んで受話器を犬の口元に持っていってもらい、「ハッハッハッ」という息づかいを聞いて癒やされていたことが懐かしいです。

 今はネットやSNSの時代なので、世界を身近に感じることができるのではないでしょうか。少しでも海外の大学に興味がある方がいたら、日本を飛び出してほしいと思います。経験は何よりの宝になると思うので!

(構成/フリーランス記者 小野ヒデコ)

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