たうち・まなぶ◆1978年生まれ。ゴールドマン・サックス証券を経て社会的金融教育家として講演や執筆活動を行う。著書に『きみのお金は誰のため』、高校の社会科教科書『公共』(共著)など

 日本人は優しい。困っている人が目の前に見えれば積極的に協力する性質を持っている。一昔前、近隣の人が荷物を預かってくれたのは、困っている配達員が目の前にいたからだ。そして、荷物を受け取る側も、隣人に迷惑をかけないように時間指定で荷物を受け取る努力を自然に行っていた。しかし、不在によって困っている配達員の姿が目の前になければ、その負担を感じにくい。

 マンション管理の負担が増せば、ラストワンマイルの負担の大きさを可視化することができる。その負担を減らそうと、一人ひとりができる範囲で協力することで、配送の現場を支える人々に少しでも気持ちよく働いてもらえるのではないだろうか。

 荷物が届くという日常の中にも、ほんの少しの想像力や気配りを加えることで、お互いに気持ちよく暮らせるようになる。そんな小さな配慮が、社会全体の暮らしやすさにつながっていくのだと思う。

AERA 2025年5月26日号

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