
「ちゃんとおもしろい番組もあって、聴いてる人たちもいる。そのうえで、世の中とアジャストするにはどうしたらいいか。それを試行錯誤しているのが、今のラジオと言えますね」
そう話すのは、『いつものラジオ リスナーに聞いた16の話』(本の雑誌社)、『深夜のラジオっ子』(筑摩書房)など、ラジオに関する著書も多いライターの村上謙三久さんだ。
ラジオの深夜放送が始まり、同時にテレビも盛り上がりを見せ始めた1960年代後半から、「すでにラジオはピンチと言われていたんですよね」と、村上さん。
「『今ラジオがおもしろい』というラジオ本のキャッチコピーを見て、『今じゃなくて、ずっとおもしろいだろう』と突っ込んでいた芸人さんがいましたが、ラジオはそのピンチから半世紀以上、ちゃんとおもしろい番組を作り続けて、リスナーを引きつけてきた。それも時代とともに変化するのが上手なメディアだと思ってます」
ポッドキャストやradikoなどのタイムシフト聴取が広がって、いつでもラジオ番組を聴けるようになったのはもうひとつの変化。またひとりで聴くのが普通だった個人的なツールから、コミュニケーションツールへ変わっていったことも、ラジオの大きな変化だ。
「深夜、ラジオを聴いてさみしさを紛らわせていたリスナーが多い時代もありました。でも今はリスナー同士がハッシュタグでつながるコミュニティーも、ラジオの大きな魅力のひとつになりつつある。流れ去っていくはずのものが、流れ去らなくなったんです」(同)

人の素に触れられる
かつてはがきの投稿などで感じていたほかのリスナーの存在は、SNSのコミュニティーに参加することでさらに鮮明に。そこでは、かつてははがき職人と呼ばれていた番組参加型のリスナーが、インフルエンサー的な存在になっているそうだ。
こうして魅力の幅が広がったラジオ。村上さんご自身にとってのラジオの魅力を聞いてみた。