ジェンダーを研究する筑波大学の鈴木彩加准教授によれば、マン氏は、ミソジニー(女性嫌悪)の一つの形態としてヒムパシーという現象があると分析しているという。
「それも全ての女性に対する嫌悪感ではありません。『女性は優しくておしとやか』といった、女性はこうあるべきだというジェンダー規範から外れ、声を上げる女性に対する嫌悪感です」
さらにヒムパシーが起きる要因として、鈴木准教授は「加害者に対するステレオタイプと、被害者に対するステレオタイプの2つがある」と指摘する。
「まず、性犯罪を起こす加害者は冷酷でサディスティック、薄気味悪いといったイメージを持たれることが多いと思います」
それが、例えば、中居氏は一見さわやかで好人物に見え、イメージしている加害者像と異なる。そのため「中居さんは悪くない」などと言いたくなるのではないか、と指摘する。
「一方、被害者に対しては、性被害に遭った女性は傷つき、無力であるというイメージをもたれる傾向があります。そういう人が堂々と声を上げたりすると、考えている被害者像から外れるため、被害は嘘だと考えてしまうところがあります」(鈴木准教授)
性被害者支援に携わる上谷(かみたに)さくら弁護士は、男性の加害者を擁護する声が上がる背景には「加害者の二面性がある」と話す。
「認知の歪み」も影響
例えば、ある学校の男性教員が性加害をして逮捕されたことがあった。その男性教員は周囲からの評判がよく、多数の保護者から「絶対にそんなことをするはずはない」という声が起きたという。
「信頼を逆手に取るのが性暴力です。その表面的な顔しか知らない人からすれば、まさかあの人が性加害をするとは思わず、加害者を擁護するような発言をしてしまうのではないでしょうか」
さらに、性犯罪加害者の「認知の歪み」も影響しているのではないかと上谷弁護士は言う。
「加害者には、自分は立派なことをしているのだから、ある程度の性的言動は許されるだろうという考えがあります。周囲もあの人は立派な人だから、このくらいは目をつぶってもいいと考え、加害者を擁護する気持ちにつながるのだと思います」