難しいのは、ヒムパシーを抱く人たちに被害者を誹謗中傷したりおとしめようとしたりという意図がない点だ。

 だが、鈴木准教授は、「加害者の擁護は被害者への二次加害につながる」と指摘する。例えば、「中居さんはいい人だ」と言っている人は、悪意はないかもしれない。しかしそれを聞いた被害者が、自分が責められているような気持ちになり、より深く傷つけられ、苦しめられることになると話す。

「しかも、加害者を擁護する発言を見聞きしていると、ほかの性暴力被害者や今後被害に遭う人も、勇気を出して被害を告発しても自分の話は信じてもらえず、世間からこんなにたたかれるのであれば、と考えてしまいます。その結果、被害に遭ったことを公にしたり、声を上げたりすることをためらわせることになります」

想像できないくらいの痛み

 ヒムパシーをなくすにはどうすればいいか。鈴木准教授は、「まず想像してほしい」と話す。例えば、痴漢に遭った人は、傷つきショックを受ける。しかしなぜ傷つくのかうまく言語化できない。だから、被害に遭ったことがない人にはその深刻さはわかりにくい。だからこそ、性暴力を振るわれた時にどう思うか想像してほしいと言う。

「とはいえ、想像できないと思います。けれど、想像できないから、そこに痛みがないということではない。想像できないくらいの痛みを被害者は抱えているということです。ヒムパシーをなくすには、そこから考えていくしかないと思います」(鈴木准教授)

 上谷弁護士もこう言う。

「加害者が同情されて被害者が傷つくのは、インターネットの影響が大きいです。当事者に対し思うことがあっても、軽々にSNSなどで発信すべきではありません。発信する前に、被害者を傷つけることにならないか、必ず考える癖をつけなければなりません」

 性暴力加害者をかばう言葉は被害者を黙らせ、深く傷つける。私たちはいったい誰を守ろうとしているのか――。一度立ち止まって考える必要がある。

(編集部・野村昌二)
 

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