
新NISAの拡充策として浮上した「こども支援NISA」。若いうちから投資を始めれば長期積み立ての効用が大きくなる可能性がある。過去に不人気で廃止となった「ジュニアNISA」の教訓をいかした制度になるのか。
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4月下旬から、突如として取り沙汰されるようになったのがNISAのさらなる改正・拡充構想だ。岸田文雄前首相が会長として主導した自民党内の資産運用立国議員連盟が「資産運用立国2.0に向けた提言」を石破茂首相に提出したのがそのきっかけで、金融庁も検討を進めているという。高齢者向けの「プラチナNISA」に加え、もう一つの柱となっているのが「こども支援NISA」だ。
65歳以上のシニア層向けに創設を提言している「プラチナNISA」とは違い、「こども支援NISA」は現行制度の「つみたて投資枠」の利用対象者を未成年にも拡大するというものだ。18歳以上という制限を撤廃し、未成年者もNISA口座で積み立て投資を行えるようにする。
この構想について、NISA活用の第一人者であるファイナンシャルプランナーの菱田雅生さんは次のように評価する。
「年齢制限の解除自体は望ましいことだと思います。未成年のうちから取り組めば、『長期、分散、積み立て』の効用がいっそう高まることが期待されます。たとえば5歳の頃から始めたら、50年間以上の長期投資を実践したとしても、まだ60歳に達しません。ただ、未成年はこうした膨大な時間を費やせるだけに、つみたて投資枠だけにとどまらず、成長投資枠でも年齢制限を撤廃しても差し支えがない気がします。こうしてあらゆる世代が長期の資産形成に取り組めば、資産運用立国の実現がさらに近づくことになるでしょう」
かつての「ジュニアNISA」とは何が違う?
もちろん、未成年者の大半はまだ社会に出て自ら収入を得ていない。「こども支援NISA」構想には、若年世代への資産移転(贈与)を促すという意図も秘められている。シニア層が保有している金融資産は日本の全家計の約6割を占めると言われており、その一部が「こども支援NISA」を通じて投資に回るだけでも、金融市場や日本経済全体にも少なからぬインパクトを及ぼしうる。
祖父母や親からの贈与を念頭に置いた未成年者向けの非課税枠付き投資と言えば、過去にも「ジュニアNISA」と呼ばれる制度が設けられたことがあった。2016年に創設されたもので、0〜19歳を対象に年間80万円までの投資で得られた運用益が非課税になるという仕組みになっていた(当時は20歳未満が未成年)。だが、なかなか期待通りに口座数が拡大せず、新NISAの開始と同時に廃止となった。