「口座数が伸び悩んだ一因は、原則として口座の名義人が18歳に達するまで換金が不可能だったことにあります。おそらく金融庁もその失敗を教訓にしているはずですから、再び未成年者にも門戸を開いた場合には『ジュニアNISA』のような換金に関する制限を設けないでしょう。その前提に立てば、利便性は高まりそうです。子ども名義で進学資金作りの運用を行う一方、親は自分たちの老後に備える運用をそれぞれ別々の非課税枠を通じて有利に進められます」(菱田さん)

 周知の通り、ここ数年の物価上昇は家計に大きな打撃を与えている。預貯金の利息程度では実質的な価値の目減り(物価上昇に伴う現金価値の低下)を食い止められない。「子どもが生まれたら学資保険に入るのが正解」はもはや過去の成功体験であり、前年比プラス2〜3%の水準に達している物価上昇には打ち勝てないのがシビアな現実だ。そういった観点からも、NISAにおける年齢制限の撤廃は大きな意味を持ってくる。

複雑な仕組みになりそうなら、声を大にブーイングを!

 新たな非課税枠の設置をはじめ、今回のNISA改正・拡充構想はまだ全貌が明らかになっておらず、今後の議論の行方を注意深く見守りたいところだ。「プラチナNISA」において毎月分配型を選択肢に加える是非をはじめ、新たな非課税枠の設定や「こども支援NISA」の生涯投資可能枠拡大など、今後の議論で焦点となってくるテーマも多い。

 複数の識者から意見を聞いたところ、現段階の構想に対しては否定的な見解が少なくないのも確かだ。しかしながら、画期的な制度改革だと称賛された新NISAも、当初に浮上していた見直し案は複雑な仕組みでわかりにくく、かなりの批判を浴びた。そういった声に耳を傾けて練り直し、大幅にブラッシュアップされて誕生したのが現行の制度なのだ。

「制度はシンプルな仕組みで、多くの人にそのメリットや活用法を理解されやすいのが一番です。そういった意味でも、○△NISAなどといった名称の付随制度を創設するのではなく、現行のものを誰もが利用でき、より利便性が高くて有利な運用が可能となる方向へ見直していくのが最善でしょう」(同)

(金融ジャーナリスト 大西洋平)

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