単に「記憶力がいい」ということだけではありません。それ以前に人が好きで、人を受け入れる度量を持っているということなのだと思います。
だから人に対して「のぞき見したい」とか「弱点をつかみたい」といった品のよくない好奇心ではなく、「この人のことを知りたい」というまっとうな好奇心が生まれるのだと思います。日常生活の中で、自分以外の誰かの話を聞く機会はとてもたくさんあります。でも実は、本当の意味で「その人のことを理解しようとして聞いている」のではなく、音声として物理的に聞いているだけのことがほとんどではないでしょうか。
お金持ちが一般の人と大きく異なるのは、この「聞く姿勢」です。真正面から相手の言葉を受け止め、その言葉の背後にある相手の感情を推しはかりつつ会話を進めていきます。単なる社交辞令としての会話ではなく、ベースが「相手を理解するための会話」なので、しっかり記憶にとどめることができるのだと思います。
あるお金持ちによれば、特定の人を思い浮かべたとき、その人に会って話したときの空気感や相手の表情が、映画のワンシーンのようによみがえってくるそうです。「自分の人生で出会う人は、すべて『自分という映画』の登場人物の1人だからね。忘れないよ」とも話してくれました。自分を大切に扱うことのできる人は、他人のことも大切にできるのだな、と改めて実感しました。
「知りたいオーラ」で話を引き出す
お金持ちは自分の知らない世界を知ることに対して貪欲です。 年齢を重ねるにつれて、若い人との会話が成立しなくなったり、「何を話していいかわからない」と言ったりする人が増えていきますが、ことお金持ちに関してそれはありません。日ごろあまり自分と関わることのない若い世代の人に会うと、目がキラキラと輝き出して「知りたいオーラ」が溢れてきます。
気さくに声をかけ、どんどん話を引き出していきます。 ただしそれは「詮索」とは違います。詮索は相手を評価したいときにするものです。世の中には、相手が自分より優れているか劣っているかが気になる人が一定数いますが、そういう人が「詮索」に走るのだと思います。
お金持ちの場合は相手を値踏みするのが目的ではなく、「相手のことを知りたい」 という純粋な欲求があるだけです。だから誰もが安心して心を開くのだと思います。
(一般財団法人自己肯定感学会代表・中島輝)
