セゾングループの総帥であり、作家辻井喬の顔も持った堤清二へのロングインタビューを、物語のような筆致でまとめた、第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。
西武グループの礎を築いた実業家で、異常な好色家であった父・康次郎が生んだ“業”と“矛盾”。死してなお清二と弟・義明氏を呪縛し、二人の因縁をつくった経緯が生々しく描かれている。その清二が、父への激しい憎悪を口にしながらも、父が命をかけた財産を守る意思や、「父に愛されていたのは、私なんです」と語る。青白い情念を帯びた言葉で父の愛情を確認しようとする「静かな狂気」の様は、最晩年の心境であり、本書はそれを見事にすくいとり、堤家とは、西武グループとは何だったのか、という根源的な問いを投げかけている。
※週刊朝日 2016年12月9日号