②実質的な借金の大きさがわかる
「ネットD/Eレシオ」

 貸借対照表の「上下」を使った、もうひとつの安全性分析が「ネットD/Eレシオ(ネット・デット・エクイティ・レシオ)」です。

 これは「純有利子負債比率」とも呼ばれ、「返す必要がある借金(純有利子負債)が、返さなくてもいいお金(純資産)の何倍あるか」を表します。

※純有利子負債=「有利子負債(短期&長期の借入金と社債の合計)」−「現預金」

img
【図解】一目でわかる、決算書の「ネットD/Eレシオ」

 例えば、ネットD/Eレシオが「3倍」なら、純有利子負債が純資産の3倍ある状態。「0.5倍」ならば、純有利子負債は純資産の半分というわけです。この数値は低いほど安全で、一般に、2倍を超えると警戒水準とされます。

 この指標のポイントは、負債から現預金を除いた「ネット(純額)」で考えることです。例えば、有利子負債が500億円、純資産が200億円ある場合、有利子負債額は純資産の2.5倍になるため危険な状態のように感じられます。

 ところがその会社が、現預金を300億円もっている場合、実質的な借金(“純”有利子負債)は200億円(500億-300億)となり、ネットD/Eレシオは1倍と計算されます。つまり、その会社の財務安全性は高いと評価できるのです。

 このようにネットD/Eレシオは、会社の債務返済能力を表す目安のひとつであり、数値が低いほど長期的な借金の返済能力が高く、倒産のリスクが低いことを意味します。

<好評発売中の書籍『決算書「分析」超入門2025』では、企業の安全性について、貸借対照表のさらに深い分析や、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書を使った分析についても詳しく解説しています>
 

img
書籍『決算書「分析」超入門2025』(朝日新聞出版)
こちらの記事もおすすめ 【3分でわかる】決算書って何? 分析のプロが教える、一瞬でイメージできる「売上」と「利益」
[AERA最新号はこちら]