
再稼働をめぐる議論が活発化している、新潟県にある東京電力柏崎刈羽原発。東京電力ホールディングスはテロ対策施設の完成延期とあわせて6、7号機の再稼働をめざす方針だ。再稼働の是非を問う県民投票の条例案は県議会で否決されたが、その再稼働の焦点となるのが、県や地元市町村が策定する事故に備えた避難計画の“実効性”。情報公開請求で明らかにされた、国と自治体の担当者が集う非公開会議の議事録からは、泉田裕彦・元知事から花角英世・現知事までの代替わりに伴う新潟県の180度の方針転換が浮き彫りになった。
(前編「原発事故の『避難計画』の実効性は… 再稼働に進む東京電力柏崎刈羽原発 『密室』の議事録に見えた新潟県の『変節』」はこちら)
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泉田裕彦知事(当時)は2016年8月、4選を目指す立候補を撤回し、退任。泉田路線を引き継ぐとして初当選した米山隆一知事(同)も女性問題の発覚によって、わずか1年半で辞職した。
そして2018年6月に自民、公明両党の支持を受けて初当選したのが、元運輸・国土交通官僚で副知事の経験もある花角英世氏だった。
新潟県は2021年9月、原発事故直後の甲状腺被ばくを防ぐために市民に配る計画となっていた安定ヨウ素剤について、「豪雪地域で緊急時配布が難しい」として、UPZ(5~30キロ圏内)でも事前に配布する方針を明らかにした。
これは半島や離島など、UPZでも地理的に緊急時配布が難しい地域に事前配布を認める指針の例外規定を拡大解釈した措置だった。
安定ヨウ素剤の事前配布を原子力規制委員会に求めていた泉田知事時代からの「宿願」が果たされたように見えるが、実際は違っていた。指針が定める緊急時配布の「原則」は守られたからだ。新潟県は原発避難計画が持つ虚構の維持に一役買ったことになる。