企画_撮影_編集 東川哲也/和仁貢介 山本二葉(朝日新聞出版写真映像部)

窓の向こうに広がる、生活の風景

編集:ありがとうございます。最後に、この写真集の中で特に思い入れのある一枚があれば教えていただけますか?

佐藤:この本は、前半は建物の中から外を見る、あるいは建物の中を見るという視点から、徐々に島の建物の外側へと向かっていく構成になっています。

 その中で、最初に登場するカットは、ある廃墟のマンションの一室から見る外の眺めです。それがやっぱり自分の中で、すごく印象として残っています。

 廃墟の窓から見えていた景色というのは、当時その建物で実際に暮らしていた人たちが目にしていた景色でもあります。そうした景色を見ると、単なる“鑑賞者”でもある一方で、その当時の人々の気持ちやどういう生活をしていたのかが、ふっと入ってくる瞬間があって。

 その意味で、窓からの景色は軍艦島に限らず好きなんですが、特に軍艦島は窓のすぐ外が海だったり、隣の建物が迫っていたりと、独特の視界が広がっている。その何気ない眺めを、当時暮らしていた人たちは、かなり印象的な景色として見ていたんじゃないか、その思いは自分もすごく強く残っています。

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