THE ISLAND軍艦島』撮影/東川哲也(朝日新聞出版写真映像部)

編集:軍艦島は閉山して50年以上経っていますが、定期的に話題になります。佐藤さんも世界中の廃墟を巡られていますが、軍艦島だけが持つ“魔力”や“魅力”とは何だと思われますか?

世界中の廃墟の中でも、おそらく王様

佐藤:やはり、シンプルに言えば「島であること」と「廃墟であること」。この2つの要素がこれほどまでに美しく共存している場所は、世界でも他にないと思います。

 たとえば、島に廃墟がぽつんと建っている、という風景は世界各地にあります。でも、島そのものが廃墟で、しかも街のような構造を持っているという場所は本当に稀です。

 この写真集の帯にも「廃墟の王」と記しましたが、それは決して大げさな表現ではないと思います。チェルノブイリ、セミパラチンスク、ヨーロッパや南米の廃墟……さまざまな場所を巡ってきましたが、それらと比較しても軍艦島は、世界中の廃墟の中でもおそらく王様と言っても過言ではない、特異な場所です。

次のページ 軍艦島でもっとも思い入れのあるカットとは