2022年1月、大阪府と大阪市が合同で設置した「万博推進局」の看板を掲げる吉村洋文知事(左)と松井一郎市長(当時)

カジノとの相乗効果で万博誘致を訴えた維新

 万博の誘致を推し進めたのは維新だ。2014年、維新の創立者で当時大阪府知事だった松井一郎氏らが、1970年の大阪万博に次ぐ、大阪で2度目の万博誘致促進を打ち出した。会場候補地に夢洲を「私案」としてあげたのも松井氏だった。夢洲にはカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致も進めており、松井氏は当時、「IRと万博がともに実現すれば、相乗効果が見込まれる」と訴えていた。

 だが、夢洲は海上に浮かぶ廃棄物の埋め立て処分場だった場所。このため、万博会場の工事中に地中からメタンガスが出てガス爆発を起こし、四方が海に囲まれているため強風が吹きつけ、地盤の排水が悪く雨が降るとため池のようになるなど、様々な問題が噴出する一因になっている。

 維新が強力に推進し、政府に認めさせ、誘致を実現した大阪・関西万博だけに、万博の失敗は維新にはねかえってくる。とりわけ今後大きな問題となりかねないのが、万博の収支だ。赤字になったときにどこが負担するかは決まっていないが、税金で補填する可能性が出てくるため、批判が高まるのは間違いない。

前売り券販売は目標の7割足らず

 万博の来場者は、開幕初日に15万人の人出が見込まれていたが、悪天候のため一般入場者(関係者除く)は11万9千人だった。2日目は5万1000人、3日目は4万6000人で、初日の半分にも達しなかった。日本国際博覧会協会(万博協会)が想定する来場者数は2820万人。開催日数184日で計算すると、1日あたりの入場者数は15万人ほどが必要となるので、遠く及ばない。

 これまでの万博では、来場者は会期が進むにつれて増える傾向があったが、夢洲は海に囲まれて交通アクセスが制約され、週末や祝日に1日あたり数十万人もの人が来場する“大入り”を想定できていない。来場者が次第に増えてきても、受け入れ態勢が取れない可能性がある。

 1160億円を見込む万博の運営費の大半は入場料収入で賄うことになっているが、万博協会の4月21日の発表によると、前売り券販売数は約970万枚。目標としていた1400万枚の7割にも達しなかった。

 吉村知事は開幕前、入場券販売の「損益分岐点は1800万枚」と言い、「クリアできると思っている」と言ってきたが、21日の記者会見では、次のように少しトーンダウンした。

「損益分岐点がすべてではない。万博にはもっと大きな意義があると思っていますが、損益分岐点1800万枚は、目標にして進めていかなければならない」

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