エル川さんは、信用取引は一切しないと心に誓ったという。信用取引とは、証券会社からお金や株を借りて株を売買すること。証券会社に手持ちのお金や株を担保として差し出すと、その約3倍まで取引できる。大きく儲けることができるが、損失も大きくなるリスクがある。エル川さんは今後、無茶なリスクを取るのをやめて、10年、20年先まで株を続けられることを最優先にしたいと話す。

 FXで致命傷を負った人もいる。40代の男性が話す。

「トランプ関税が発動されたら、輸入物価の上昇を通じてインフレが進み、アメリカの長期金利には上昇圧力が加わり、ドルが買われやすくなる。一方で、欧州中央銀行は低迷する欧州経済を背景に利下げ傾向にありました。だから、ユーロ/ドルの売りポジションを持っていたんです。しかし9日にトランプさんが急に『相互関税の90日停止』を決めて、期待はもろくも崩れました。関税停止でインフレ圧力が低下してドル売りが進み、関税リスクが低下したことでユーロ買いが進むことに……。その結果、ユーロ/ドルは3年ぶりの高値まで爆騰して、気づいたら私のポジションは強制ロスカットされていたんです」

見たくなくて

 男性が失った資金は240万円。昨年からコツコツ増やしてきた資金は、一気に80万円まで減少したという。

「最大の敗因は、損切りできなかったこと。関税停止の速報を受けて、すぐにチャートをチェックしたのに、大幅な含み損を抱えるポジションを見たくなくて、すぐにパソコンの画面を閉じてしまいました。『もしかしたら、トランプさんがすぐに関税停止を撤回するかも』なんて甘い期待を抱いて……」

 一方で、こうしたなか、好機と捉えて安値で株を仕込んだ人もいる。投資系YouTuberとして知られるJINさんが話す。

「トランプ関税が発表されてから日米ともに株安が進んで、『絶好の買い場がやってきた!』と思いました。4千万円弱保有していた現物株の含み益が7日の暴落で吹き飛びましたが、以前から目をつけていた米国株を中心に1千万円ほど追加で仕込みました。そのおかげで、1週間足らずで700万円の含み益が出ています」

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