世界の金融市場は波乱の展開だ。写真:AP/アフロ

 女性はそう恨み節を漏らすが、もっと大きな損失を被った人もいる。

「暴落を真正面から食らうショックよりも、上昇相場に乗り遅れて後悔するショックのほうが大きいと判断して、3月以降の下げの局面で買い向かいました。現物株だけでなく、信用取引でも買いポジションを増やしていました。その信用ポジションのマイナスが大きく響いて、資産は年初から50%のマイナスに。金額にして2千万円近く失ってしまいました」

 そう話すのは、兼業個人投資家のエル川さん。中長期で値上がり期待のある個別株に投資してきた。資産は5年で約4倍に増え、3月時点では5千万円に到達していたが……大きく目減りしてしまったという。

ほぼ一睡もできずに

「2日にトランプ関税が発表された以降も、都合のいいように解釈してしまい、ポジションを減らさなかった自分はどうかしていたと思う。4日夜の下落で青ざめて、土日(5、6日)はずっと心臓が痛くて食事もほとんど喉を通りませんでした。過去の急落相場と同じ過ちを繰り返す自分が嫌になって、かといってどうすることもできない状況にわめき散らかしたりしていました。月曜日(7日)まではもう地獄のような時間でした」

 ほぼ一睡もできずに7日を迎えたエル川さんは、日本経済新聞の「トヨタ、米関税『想定の中で最悪』」と題した記事を目にして絶望したという。午前7時に取引が開始された日経先物が大幅安となったことで、「最悪の場合は借金を抱えることになると覚悟して両親に泣きながら報告する妄想までした」と話す。

「奇跡的に現物株の取引が始まるまでに、相場が若干戻したので、すぐさま信用ポジションをすべて清算しました。大きな損失を被りましたが、7日は投資人生のターニングポイントになった日だと、今は前向きに考えています」

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