
映画「Page30」は、DREAMS COME TRUEの中村正人さんがエグゼクティブプロデューサーと音楽を、「SPEC」「TRICK」などで知られる堤幸彦さんが監督を務める。そんな二人がユニークな上映方法に込めた思いとは。AERA 2025年4月21日号より。
【写真】映画「Page30」の音楽にはジャズピアニストの上原ひろみも参加
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──本作は上映方法も斬新だ。東京・渋谷の渋谷警察署裏にテントシアターを建て、そこから全国へと上映を広げていく。名付けて「渋谷 ドリカム シアター」。
中村:僕も監督も「表現には小屋が大切だ」という思いが一致していました。僕は野田秀樹さんの「夢の遊眠社」が東大の食堂で始まったときから見ているし、シルク・ドゥ・ソレイユが初めてロサンゼルスのテントで始まった時も見ているんです。この映画の舞台である閉ざされた円形劇場をテントのなかで見るなんてゾクゾクしますよね。
堤:僕も学生時代、唐十郎さんの紅(あか)テントや、劇団黒テントなどを見てきました。都会のノイズの中で表現行為を見る体験は忘れがたいものです。ある意味、都市のナイフのようなこの映画が上映方法を含めてアグレッシブな形になったことに本当に感動しています。
中村:上映後もドリカムシアターでいろんな実験をしてほしいんです。学生さんやバンドメンバーなど「何かをやりたいけど小屋がない」という人たちが夢を実験する場になればいい。もちろん賃料はいただきますけど(笑)。「あの人に会わなかったら、いまの自分はない」と同様に「あそこに行ってなかったら、いまの自分はない」という場所がある。僕は渋谷パルコに行って人生が変わりましたから。

若者へ支援惜しまない
堤:僕も全く一緒です。18歳で東京に来て毎日渋谷駅から表参道、青山と歩き回って「シャツ高い! 買えない!」って(笑)。当時勃興してきた渋谷公園通りのカルチャーを前に自分は本を買うだけでなく、そこに入ることができるのか、自分はひとかどの者になれるのか、ものすごく不安でした。もしそこに入れなかったとしても、その場所や文化に参加した喜びをかみしめる瞬間は絶対にくる。若い世代へのそのための支援は惜しみません。いま、まだ何者でもない俳優たちを20人集めて全員が映画の主役という企画を進めています。また力を貸してください。
中村:ぜひお手伝いさせていただきます。この映画がうまくいけば、ですが(笑)。
(フリーランス記者・中村千晶)
※AERA 2025年4月21日号より抜粋
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