日本で最も著名なフェミニストがそろって夫婦別姓に冷笑的だった時代もあったのだ。お二人の意見は、そもそもセックスする相手を国に登録する制度自体(結婚のことです)が問題なので、夫婦別姓などあほくさ、ということである。かなり乱暴な論だし、困っている人にとっては冷酷だし、はっきり言って誰の役にも立たないフェミニズムである。だいたいそもそも上野さんご自身が2021年に男性と法律婚をされたので、ちょっと!? とも思うが、それでもどこか痛快な感じがするのは、「制度を壊す」「制度を無視する」自由がフェミニズムの面白さであることを思い出させてくれるからかもしれない。
私自身は、選択的夫婦別姓導入を願うフェミニストである。ただ、今の日本社会でたとえそうなったとして、子供の氏を父系にしていく家族が大多数なのではないかと想像する。結局、それは大多数の人が父の姓を名乗り生きていく社会を変えることにはならないのではないか。そしてそういった連綿と続く無意識の父系社会は、女の生きづらさにどのような影響を与えているのだろう……そんなことが気になる。
なので、2002年の露悪的なフェミニストに倣い、2025年のフェミニスト、ちょっと露悪な提案をしてみたくなりました。
選択的夫婦別姓なんてね、女たちが最大限に譲歩したギリギリの生ぬるい提案であることを理解してほしい。それすら受け付けられない国ならば、この際、強制同姓のまま母系にしませんか。夫婦の姓は女側で統一し、産む人の姓を子供は引き継ぐ。そういう社会を生きてみてこそようやく、男の方たちも、父権制の呪縛から逃れられたりするのではないでしょうか。
そんな社会を妄想しながら、この生ぬるい選択的夫婦別姓すらここまで通らなかった国のやばさを痛感している。