「選択的夫婦別姓」の導入を法制審議会が答申したのが1996年だった。民主党政権時代に実現直前まで議論が進んだかのように見えたが、結局頓挫した。リベラルな民主党政権の中の「家父長」が、選択的夫婦別姓を許さなかったのだ。たかが氏、でもやっぱり氏の世界。家父長の権限が薄れることを絶対に許さない力でこの国は運営され、そしてその強情さで、もしかしたら衰退しているのではないかと思うほどである。

 ところで、選択的夫婦別姓についてフェミニストたちはどのように考えてきたのだろう。先日、2002年にベストセラーになった『ザ・フェミニズム』という本を久々に開いた。50代前半の上野千鶴子さんと小倉千加子さんが、性を巡る現象、女を巡る様々についてフェミニズムの観点から関西弁で露悪的に自由奔放に語り合う対談だ。メディアで大活躍していた著名なフェミニスト二人の対談は、当時大変注目された。その中でお二人は明確に夫婦別姓を支持しないと言い切っていた。

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小倉 上野さんは夫婦別姓、どう思ってはるの?

上野 私ですか? あほくさ、と思ってます。小倉さんはどう思ってるんですか?

小倉 「あほくさ」もええとこよ。

上野 意見が合いますやん。

小倉 けど、これが通じてないんですよ。「小倉さんはフェミニストだから、当然、夫婦別姓に賛成ですよね」と言われることがいっぱいあってね。とまどってしまう。「フェミニスト=夫婦別姓賛成」って、世の中ではそういう

上野 誤解が・・・

小倉 ある。(『ザ・フェミニズム』筑摩書房)

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