
精神状態が不安定に
精神状態が不安定になり、子どもにも少なからず影響を及ぼしていると感じて退職。夫には事件について全て話し、今は別の会社で働いている女性は言う。
「あの日、社長について行った自分をさんざん責めました。けれど、夫や信頼できる友人がどんな状況でも寄り添ってくれ、『あなたのせいじゃない』『自制できない人間に問題がある』と自分のことのように怒ってくれました。私の意思を尊重してくれる人たちに支えられ、罪は加害者にあると思えるところまでやっとこれました」
職場でのセクハラ・性被害が後を絶たない。
元タレントの中居正広氏とフジテレビのアナウンサーだった女性との間に生じたトラブルは、同社が設置した第三者委員会が3月末、「業務の延長線上の性暴力」と認定した。厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」(23年度)では、「過去3年間に職場でセクハラを受けた」と回答した女性は8.9%(男性3.9%)。女性は約10人に1人だ。セクハラの内容(男女合計)は、「性的な冗談やからかい」が49.7%と最も多かった。
労働局の指導に限界
背景には何があるのか。
「職場での上下関係が大きい」
こう指摘するのは、性暴力被害の研究を進める、日本女子大学名誉教授の大沢真知子さん(労働経済学)だ。
「フジテレビの問題では中居氏と被害女性の『権力格差』と指摘されました。上下関係がある中、意図的である場合と、意図的ではなくても相手への好意からの言動が相手に不快感を与えたり、プライベートな空間に踏み込んだりします。どちらにしても、下にいる者は断れず、性被害に遭ってしまいます」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年4月21日号より抜粋