
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年4月21日号には四季の森 どうぶつクリニック メディカルスキンケアセンター 犬の皮膚科専門獣医師 平川将人さんが登場した。
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毛がほとんど抜けていたり、かきすぎて傷ができていたり……。そうした犬の皮膚を治療する獣医師としてクリニックで診療しながら、全国各地で往診する。出張診療の日程と場所をSNSで告知すると、あっという間に予定が埋まるという人気ぶりだ。
「犬の皮膚のトラブルに悩む飼い主は増えています。症状の緩和ではなく、再発防止のための根本的な治療をめざしています」
勤務医だった頃から、ほかの病気と比べてなかなか完治しない皮膚病に頭を悩ませていた。皮膚病は原因が一つではないことのほうが多く、治したい一心で研究に励んだ。
2014年に皮膚科専門のクリニックを開業。問診と視診を繰り返してたどり着いたのが、遺伝や体質を総合的に評価し、治療するというアプローチだった。
「薬を使っている間は治るが、やめると再発する。これは根本的な治療とは言えません。最も大切なのは体質改善だとわかってからは自信を持って治せると言えるようになりました」
初診にかける時間は1回1時間半ほど。病気の原因を知るために犬の生活環境、食事とおやつの内容など、飼い主から詳しく聞き取る。原因を突き止めたら、投薬で症状をやわらげる一方で、将来的に再発を抑えられるようスキンケアや体質改善について指導する。
自身がかつて飼っていた2匹の犬も皮膚病が絶えず、悩んだ経験がある。検査を繰り返しても特別な異常は見つからず、あらゆる治療をしても改善しなかったという。
「1匹でも多くの犬を救いたいという原動力はここから来ているのかもしれません」
開業当初は外来診療のみだったが、評判が口コミで広まり、遠方から相談の電話がかかるようになった。そうした人たちにも対応できるようにオンライン診療を始め、アクセスしやすい東京都内にサテライトクリニックを開設。それでも受診が難しい人たちからの要望を受け、出張診療を決めた。
出張で診療できる回数には限りがあるが、希望者があふれ、予定の回数を増やして対応したこともある。「大切なペットの病気をどうしても治したいと切望する飼い主の気持ちがわかるから、どんな場所にも駆けつけます」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年4月21日号