IT業界から寿司職人に転身した小松詩織さん。接客も板についてきた=東京・銀座の「鮨 銀座おのでら 登龍門」(ONODERAフードサービス提供)
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 生成 AI をはじめとするデジタル技術の導入・普及に伴い、人材に求められるスキルが大きく変わりつつある。日本も同様で、大量のホワイトカラーの減少と「人余り」が同時に起きる社会に突入する過渡期にある。そんな中、ホワイトカラーの仕事を離職し、「手に職をつけるリスキリング」でノンデスクワーカーに移行する潮流が始動している。

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「脱ホワイトカラー」を志向する人々のリスキリングの一つとして注目を集めているのが、ONODERAフードサービスが運営する寿司職人の養成機関「GINZA ONODERA 鮨アカデミー」(東京都世田谷区)だ。同社は海外5店舗を含む22店舗で本格的な江戸前寿司を提供する「鮨 銀座おのでら」などを展開。日本人だけでなく、海外やインバウンドの寿司人気を牽引する成長企業だ。

 同アカデミーは国内外で寿司の人気が高まり、寿司職人の需要が急増するなか、世界で活躍できる人材を育成しようと、2017年に開校。以来、3期にわたって250人以上が受講し、参加者は年々増加傾向にある。第3期の受講生は現時点で約160人。平均年齢は46歳。寿司職人を目指す人だけでなく、副業や趣味としてスキルを身に付けたい人も多いという。

 食材の選び方からネタの捌き方や握り方まで現役の寿司職人から実践形式で学べるカリキュラムを用意。カウンター客との間合いやコミュニケーションの取り方など、現役の寿司職人ならではのスキルも伝授してもらえるという。

 ここには、保険会社の営業職から脱サラして寿司職人を目指す人や、定年後に和食店の開業を目指すメーカー勤務のエンジニア、海外で寿司職人として働くことを志向する若者など、多様な履歴と野心に満ちた人材が集まる。

 その一人、小松詩織さん(36)は古書店員やIT企業での事務職経験を経て、昨年2月から半年間受講。その後、ONODERAフードサービスに入社し、東京・銀座の「鮨 銀座おのでら 総本店」(以下、総本店)の近くに22年にオープンした「鮨 銀座おのでら 登龍門」(以下、登龍門)で駆け出しの寿司職人として修業の日々を送っている。

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