AirKnockでは冒頭2分程度は天気予報や施設情報、広告等を掲出し、その後、混雑している場合は他個室の埋まり具合と経過時間を表示する(写真:バカン提供)
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 商業施設やオフィスビルのトイレが快適で落ち着く空間になってきており、個室利用時間が長時間化する傾向があるという。不要な長時間利用を減らし、混在解消するための取り組みに注目した。AERA 2025年4月14日号より。

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 トイレの混雑解消を目指す企業がある。IT技術を使った人流の最適化に取り組むバカンは2016年の創業以来、トイレの混雑を解消するソリューション開発を続けてきた。最初に取り組んだのが、混雑の可視化だ。トイレの利用状況の把握は管理者らの体感による部分が大きい。そこで、施設内の各トイレの利用実態をセンサーでデータ化し、空き状況をスマホや施設内のサイネージに映し出すシステムを開発した。メディア事業本部長の鈴木慎介さんは言う。

「一部のトイレはかなり混んでいるのに別フロアは空いている、という状況は実際にありました。それを可視化すれば利用者が分散し、混雑解消につながるケースもあります。一方で、『どこのトイレもやっぱり混んでいるね』という状況が見えてきた施設も少なくありませんでした」

 そこで生まれたのが、混雑解消システム「AirKnock」。他個室の空き状況と自身の利用時間を個室内の画面に映し出す。退出を強く促すものではないが、状況を伝えることで必要以上の長居を減らす狙いがある。

 大型オフィスビルの男性トイレで行った実証実験では30分以上の超長時間利用が64%減った。既に、オフィスや商業施設など計約1万2千個室に導入されている。鈴木さんは続ける。

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