
「求人広告を無料で求人サイトに載せますよ……!」
人手不足の中小企業を狙って電話勧誘する。「結構です」と断られても、「無料なら……」と相手が根負けするまでアプローチを続ける。結果、表向きは「無料の求人広告の掲載」の契約を締結させる。問題はそこからだ。
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契約書には、無料期間が過ぎると、自動で有料の掲載に更新される条項が隠されていて、のちに何十万円もの掲載料を請求する。また、解約しようとすると、それを妨害するような工夫をして解約をさせずに高額請求を行うということもある。こうした悪徳業者による「無料求人広告トラブル」が増えている。
これには国も注意喚起をしている。中小企業庁はX上で「人材確保が厳しい状況下ではございますが、無料で求人広告を掲載するとの勧誘には御注意ください。後で、高額な料金を請求される場合がございます。ハローワークのHPでも、以下の注意喚起のチラシを掲載しております」と発信している。
しかし被害はおさまらない。
後の祭り
ひかり総合法律事務所(東京)の高木篤夫弁護士はこう話す。
「解約に関する書類を無料期間の終了間際に送ったり、わざとそれが『解約の申し入れ書』とわからないようなフォーマットで送ったりする。また、アンケートのような書類で送ったりもして見落とさせる。無料で求人サイトに掲載する期間が過ぎた頃合いを見計らって『掲載料の〇〇万円を支払ってください』などと言って掲載料を請求する。掲載を承諾した事業者はそこで驚くのです。『えっ、無料じゃなかったの?』『解約のタイミングがわからなかった』と。しかしそうは言っても後の祭り。請求の催促が始まります」
高木弁護士は、人手不足に悩む中小の薬局から広告掲載トラブルの案件を受けた。弁護士側が内容証明を悪徳業者に送り「錯誤取り消し依頼」をすると請求はあっけなく止まったという。しばらくはその求人サイトに広告が残っていたため削除依頼も行った。