加藤晴彦さん(撮影/写真映像部・和仁貢介)

2児の父となり「世界が変わった」

 子育てに積極的に参加することで、見える世界がガラリと変わった。

「子どもが生まれて物理的に変わったという事ではなくて、視野が広がりました。例えば遊びに行く場所ひとつとっても、子どもにとってどうなのか? 便利さや楽しさだけではない『学びがあるのか?』を考えています。子どもが成長し、進学する上でも考えさせられることも多いです。幸いなことに我が子の幼児期の園生活はとても恵まれていました。しかし、小学校では教育現場の違和感や混乱を目の当たりにしました。そのため、教育にもとても興味が湧いてきました」

 教育に関心を持ったことで、必然的に教育現場との接点が増えた。保護者会役員から始まり、現在は、保護者会とは別の学校法人の理事にも就任している。

 さらに加藤さんが今参加しているのが、NPO法人の立ち上げだ。教員の働き方改革などで部活動が減少する中、子どもたちにさまざまな競技との出会いと、体を動かす機会を提供するスポーツ組織「AOZORA」の立ち上げに参画している。メンバーは現役の教師や校長・アスリートなどさまざまで、心から子どもたちの未来を考える人たちが集まっている。

「実際に動き始めてみると、場所の確保や人の確保なども含めて、想像を絶するほど大変だと感じています。最初からいきなり完璧を目指すのではなくて、子どもたちに楽しんでもらうところから始めていこうと思っています。」

 この活動を通して、加藤さんは子どもたちに「人間として成長してほしい」と願っている。その根底には、一部の大人たちが悪びれもせずに身勝手な振る舞いをすることへの“怒り”がある。

「僕は自分が偉いとは一切思ってないですけど、最近は30代~50代のいい大人でも本当に自分勝手な人が多いなと感じているんです。それぞれの個人や家庭で、その人なりの物差しがあるのは当然です。でも一歩外に出たら、社会の物差しに合わせて行動することも必要です。なのに、最近は自分の物差しを家の外でも振りかざしている人が多い。悪いことをしたらまず謝るべきなのに、相手を責める人もいます。トラブルになると先に騒いだ人が勝ちのようになって、結局、正しい行動をしている人がコトを荒立てないように口をつぐむことも少なくありません。直接話したこともない人を陰で悪く言う保護者などなど、言い出したらキリがありません。見えない所から石を投げるような……そういう非常識や理不尽さが許せないんですよ」

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