
トランプ大統領が、米国に輸入されるすべての自動車に25%の関税を課すと発表した。他国に対する“貿易戦争”をエスカレートさせている。AERA 2025年4月7日号より。
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トランプ氏が仕掛ける“貿易戦争”が日本にも波及することになった。日本にとって自動車は最大の対米輸出品。関税が発動されれば日本経済には大きな打撃となりそうだ。
3月26日の記者会見で、トランプ氏は「多くの(米国での)工場建設につながり、雇用の面でこれまでにない数字を見ることになり、最終的には多くの人々が多くの車をつくることになるだろう」と述べた。
また、ホワイトハウス高官は、日本やドイツ、韓国などを名指しで、米国に大量に自動車を輸出しながら、米国車の輸入は少ないと指摘し、「単純に公平ではない」と批判した。
市場を弄ぶ方針変更
その3日前の3月23日、ブルームバーグ通信は、米政権の相互関税について「一部の国・地域は除外される見込みだ」と伝えていた。そのため、自動車部門では関税の影響を過度に警戒する動きが少し和らいでいた。
しかし、トランプ大統領は株式市場を弄ぶように、方針を変更してしまった。
さらにトランプ氏は「相手国が我々に課す関税と同じものを、我々も課す」と繰り返し主張している。これは実務側からすると、世界中の数百カ国・地域との貿易に対して個別の関税率を設定することを意味するので、途方もない作業となり、たまったものではない。他国の関税と同水準にする計画は、メキシコとカナダからの輸入品への25%関税や、鉄鋼・アルミニウムなど特定セクターへの関税など、他の関税に加えて実施されるという。
国際政治学者のイアン・ブレマー氏は現状についてこう語る。
「トランプが他の大統領と違うのは、予測不可能な点(unknowability)だ。たとえ関税を停止したとしても、いつでも再開する可能性がある。その予測不可能な点が、米国での事業コストを、おそらくどんな規制や税金よりも増大させ、長期投資の継続的な足かせとなっている」
トランプ氏は「関税男」と呼ばれ、関税政策を万能薬と考えているように見えるが、それは何のために行われているのか。
貿易不均衡を是正するためなのか、フェンタニル中毒の問題を解決するためなのか、移民問題や領土的野心に対処するためなのか。トランプ氏はこれまで何度も「tariff(関税)という言葉は辞書の中で最も美しい言葉であり、宗教に勝るとも劣らない」と繰り返し主張してきたが、いずれにしても、複数の目的のために「脅し」として関税政策を利用していることは明らかである。